終末のフール (集英社文庫)終末のフール (集英社文庫)

作者:伊坂 幸太郎 出版社:集英社(2009-06-26)
価格:¥ 660  在庫あり。
3-5star




CustomerReviews

「平凡な日常を懸命に生きる事の大切さ」  by cymbaline

4star2009-08-16
「8年後に小惑星が地球に衝突し、地球は終焉を迎える」という発表があってから5年が経過した…という設定。つまり「地球の生命は残り3年」という設定の、“杜の都”仙台が舞台。
発表後、街には頻繁に略奪が起こり暴徒が闊歩したが、今はそれらも一段落した…という状況の設定で様々な人間模様が描かれています。
仙台市北部の小高い丘の上の団地で生きながら“その日”に様々な想いを巡らせながら生きている人々。「選ばれた人がシェルターに入る事が出来る」と説く新興宗教っぽい連中が現れ、それに呼応するように集会に集う人々がいる一方で、同じ日常を繰り返す人々。いったんは諦めムードが漂った時期を経て、それでも残りわずかな日常を生きようとする人々の様子を淡々と描いた、どこかクールでありながらも穏やかな文体が魅力的な小説です。
最終的に作者が言いたかった事は、「生きるという事の尊さ」。
この種のテーマを命題とした小説を書く作家に白石一文氏がいます。彼は登場人物の言動に強いメッセージ性を持たせて哲学的な手法でそれを説くのを得意とした作家だと思いますが、この小説はそれとはベクトル的に逆の手法を採っているように感じます。終わりが見えているという極限の状況にあっても、穏やかに、「普通に」生きようとする人々の様を描く事によって「生きる事」の大切さを説いているのでは?。
「平凡な日常を懸命に生きる事の大切さ」。この普遍的なテーマを穏やかな文体で訥々と、セピア色のイメージで描いた、不思議なムードの小説です。

おもしろかったです。  by Hana

3star2009-08-15
おもしろかったですが、新井素子の「ひとめあなたに」と似すぎてませんか?
隕石が落ちてくること(落ちてくるまでの期間は違うけど)やそういう状態になって、人が狂っていく様など、読めば読むほど、「ひとめあなたに」を思い出しました。

伊坂流 渚にて  by デュエット

4star2009-08-15
7年後に地球に小惑星が落下することがわかった。
遙か昔にも小惑星が地球に落下したことがあった。 その時に滅んだのは恐竜である。(もちろん恐竜だけが滅んだわけではない・・・)
今度は人間が滅びる番だ。

それから4年が過ぎた、日本の、東北の、仙台市郊外の、と或るニュータウンがこの連作短編集の舞台である。
世界は7年後の滅亡を知って大パニックを起こし、暴動が起き、殺人や自殺が頻発、生きる目的を失った人間たちは社会生活を放棄した。
物語では直接触れていないが、物語の始まりまで生き延びた人間は全体の何割だったのだろう。

死の宣告から4年目、なぜかはわからないが世界は落ち着きを取り戻してきたように見える。
細々ながら流通機能が戻ってきて、食べ物が手に入るようになった。 いつ誰に襲われるかわからない、まちがっても一人歩きはできなかった治安の悪さもなんとなく収まってきた。
そして、終末まではあと3年だ。

8つの短い物語はこの状況下のニュータウンに暮らす人々の、日常と心理を描いている。
ひとつひとつの物語は独立した作品でありながら、緩い繋がりもあって、最終話ではすべての登場人物が顔を見せていた。
そういえば伊坂幸太郎の小説では、前作の主人公が次作に顔を見せるのは恒例行事だから、いつもの手法とも言える。

エリオットの「世の終わり」を思い出しました。 (人類最後の日を描いた小説「渚にて」の原詩です。 映画のほうが有名かな)
In this last of meeting places
We grope together
And avoid speech
Gathered on this beach of the tumid river

伊坂流で同じテーマを扱うと、渚がニュータウンになるのね。

地球の終わり  by カラッと爽快

4star2009-08-15
同じ町にいる8つの話がそれぞれで完結しつつ、ちょっとずつ関係しているという感じ。
伊坂作品らしく独特な世界観。
死をどうとらえるか、8つの話に出てくる登場人物がそれぞれ考える。
考えていないように本人が思っていても、吐いてしまうなど、体は正直に反応してしまう、などなど、実際にそんなことになったら自分たちもそうなるのかなと思ってしまうことがたくさん。
死を意識することで、どう生きるのかを自分にもあらためて問いかけるきっかけを作ってくれる作品。何気ない日常も大事にしたいと読み終わって感じた。

穏やかに生きること  by vatmideo

4star2009-08-12
設定にかなり無理があるけれど、読み進むうちにその設定のなかで物事を考えさせてくれます。
SFが好きな方からすると、小惑星とぶつかることがわかった混乱期がないのは物足りないかもしれませんし、他の作品のように、「最後に氷解」というほど見事ではないけれど、悪役のいない世界で人が繋がりあう点で最後まで面白く読むことができました。